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2012年11月 9日 (金)

なぜ、真のチームが必要なのか

4822249247齋藤ウィリアム浩幸「ザ・チーム (日本の一番大きな問題を解く) 」、日経BP社(2012)

お奨め度:★★★★★

米国で起業に成功し、日本に活動拠点を移し、影響を与えている齋藤ウィリアム浩幸が、日本のもっとも重大な問題は、グループは作るがチームが不在なことだと指摘し、この問題の指摘と解決策を、自分のキャリア上の経験を紹介することにより、述べた一冊。

この本の中で、極めて本質な指摘が2つある。一つは、チームとグループを分けるのはパッションであるという指摘。多様性だとか、チームの要件にはいろいろとあるが、もっとも重要なのはパッションである。パッションがあれば、あとは何とかなるとすら断言している。

このことをつくづく思うことがある。それは、チームを編成するときだ。日本人というか、僕の知っている範囲でいえば、多くの人は、馴染んだ人、気の合う人、自己主張をしない人と一緒に仕事をしたがる。初めての人と仕事をするのが面白いといっている人が時々いるが、10人中7~8人は似非である。実際に見ていると、自分のやり方を強要している。
逆に、馴染んでいる人とチームを組んでおいて、任せているといけしゃあしゃあというリーダーも少なくない。任せるも何も、相手はよく分かっていて、同調してくれるだけの話だ。

パッションさえあれば、こんなことは思わない。何とか成功しようとすると、付き合いやすいとか付き合いにくいを乗り越え、本当に必要な人と仕事をしようとする。

二つ目は、チームでやらない限り、製品はできても、システムはできないという指摘だ。著者が上げているのは、iPhoneの例。iPhoneがサクサク動き、たとえば、日本メーカトップシェアのメーカのスマートフォンはもたもたしている。iPhoneはシステムとして機能しているが、後者は機能を同じ筐体の中に実装しただけだからだ。たとえば、スマートな機能間の切り替えやリソースの取り合い、ハードとソフトの連携などは、設計の段階から関係者がすべて意見を出しきり作らないとできない。ところが、日本のメーカは、担当者が機能や部品を作った上で統合している。これでは、スマートフォンのような複雑なシステムはできないと指摘している。

さらに、著者は自動車産業で強みとされている「摺合せ」についてもクルマがハードだった時代には強みであったが、今のように車がシステムになってくると逆に足かせになるだろうと指摘している。クルマもチームで作る時代で、今では、心理学の専門家を中心にしたチームで作っているケースもあるという。

この本は、現在の日本の状況を第三者的に教えてくれ、チームワークがよいなどといった幻想を打ち砕いてくれる。その上で、チームとして仕事をする方向性を教えてくれるリーダー必読の一冊だ。

ただし、難しいと思うのは、チームワークが強みだと思っている人が、この本を読んでも気づかないことだ。そんな人が多ければ、日本に未来はないとすら思わせるインパクトのある本だ。

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