« 無駄のないイノベーションの方法 | メイン | 天才でなくてもイノベーションを達成できる »

2012年9月11日 (火)

部族という新しい組織の形

4062176009セス・ゴーディン(勝間 和代訳)「トライブ 新しい“組織”の未来形」、講談社(2012)

お奨め度:★★★★★


稀代のマーケッタであり、コンサルタントであるセス・ゴーディンの新作。翻訳は勝間和代さんで、彼女自身が持ち込んだ企画だそうだ。まえがきに、自分自身はこの本が出る前からこういう活動をやっていたよと言わんばかりの自身の活動を書かれているのが本としてはちょっと残念だが、トライブという概念自身は本物で、本もよい本だと思う。自分の活動スタイルを模索している人には、ぜひ、一読をお奨めしたい。

トライブという言葉は日本語では、部族という意味で、メンバーが互いにつながり、リーダーとつながり、アイデアとつながった人々のグループをトライブという。

ただし、「トライブ」と「グループ」は違う。グループからトライブに変わるには、以下の2つが必要である。

(1)共有する興味
(2)コミュニケーションの手段

トライブには、リーダーがいる。企業は1人の場合もあれば、複数の場合もある。そして、トライブに参加する人は、「つながり」と「成長」と「新しいもの」を求めている。それがトライブである。

トライブは世界中の至るところにできてきている。しかし、トライブを率いるリーダーは足らない。だから、セス・ゴーディンの主張はこうだ。

・現代は企業や組織内の誰でも-上司だけはなく-リーダーになることを期待される時代だ

・今日の職場の構造をみれば、かつてないほど変化を起こしやすく、個人がこれまで以上にレバレッジを手に入れたことが分かる

・変化を起こし、常識破りの製品やサービスを生み出す企業や個人に、マーケットが報いる時代がやってきた

・トライブを率いることは魅力的かつスリリングで、利益を生み、おまけにすごく楽しい

・同僚や顧客、投資家、ファンのトライブがあなたを待っている。あなたが彼らをつなげ、彼らの行きたい場所へ率いてくれるのを待っている

トライブにはいくつかのポイントがある。一つ目は、リーダーシップである。リーダーシップの極意は自分の信じる変化をつくり出すことである。リーダーシップには何かの資格が必要だと考える人が多いが、トライブでは、権限を持たない人がある日、突然キーパーソンになる。トライブは同じようなチャンスを誰にも与えてくれるので、必要なのはアイデアと心構えだけだ。トライブのリーダーシップはボトムからリードするものだ。

リーダーはメンバーの働きを高めるために、

・共有する興味を「夢中で取り組める目標」や「現状を変えたいという欲求」に変える
・メンバーが緊密にコミュニケーションできるツールを与える
・トライブにレバレッジをかけ、規模を大きくし、新メンバーを引き入れる

という戦術を取る。

トライブのリーダーシップの本質は、自分の中の恐れに気づき、トライブの中にある恐れの感情にも気づくことである。人は失敗して批判されることを恐れる。訪れるチャンスを常識破りのものにするためには、まず、

1.この仕事で批判されたら、自分は取り返しのつかない痛手を負うか?

と問うて見よう。そして、「批判されてもちょっといやな気分になるだけ」だと思えたら、次に

2.人に批判される常識破りのものをどのようにすればつくり出されるか

と問うて見る。そして、そこに突き進む。

自分が率いるトライブを決めるのは自分自身である。その際、2つのことを心に留めておいてほしい。

・現代は、個人がこれまで以上に大きな力を手に入れた時代
・現状を打ち破る人間になることをためらうのは、信念が足らないからだ

信念を強化するにはどうすればよいか。それはリーダーとして、何を妥協できないかを自覚することだ。すると、信念は希望につながり、恐怖を克服する。つまり、絶対にうまくいくと信じる力を育てる。

信念を持つリーダーはムーブメントを起こす。ムーブメントを起こすには、5つの方針と6つの原則があればよい。

(1)5つの方針
・マニフェストを公表する
・フォロワーとつながる仕組みを作る
・フォロワー同士がつながる仕組みを作る
・お金は二の次と理解する
・ムーブメント成長のプロセスを明らかにする

(2)6つの原則
・透明性が肝心
・ムーブメントには広がりと変化が必要だ
・ムーブメントは日々成長する
・ムーブメントの存在や進む方向性が明らかになるのは、現状と比較したときか、目標の異なるムーブメントと比較したときだ
・ムーブメントにそぐわないメンバーは排除する
・ムーブメントにとって効果があるのは、自分自身のフォロワーを築くことだ

最後の問題はリーダーをマネジメントすることは可能かという問題だ。この問題に対しては、「ポジティブな逸脱者」という答えがある。すなわち、

1.その組織の中で変化を起こせる異端者を見つける
2.彼らをリーダーとして、彼らのやり方を広める場所や機会を与える
3.彼らがフォロワーを見つける手伝いをする

を繰り返す。

20年位前に、マッキンゼーのカッツェンバックがチームという概念を明確にした。このときも、グループとチームはどう違うかという切り口があった。トライブというのはチームとは異なる。自然発生的なバーチャルな組織である。チームとトライブの違いは、個人が中心か、組織(チーム)が中心かという違いである。個人が中心であるので、参加もリードもコミットメントも個人が決める。そして、緩いつながりにより、相互作用が起こり、機能する。アメーバーに近い。やっとこういう時代がきたかと思う。


トラックバック

このページのトラックバックURL:
http://bb.lekumo.jp/t/trackback/605869/31149023

部族という新しい組織の形を参照しているブログ:

コメント

コメントを投稿

PMstyle 2024年4月~7月Zoom公開セミナー(★:開催決定)

アクセスランキング

カテゴリ

Powered by Six Apart

Powered by Google

  • スポンサーリンク
  • サイト内検索
    Google