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2010年6月 3日 (木)

対話による交渉力を身につける(書籍プレゼントあり)

4862802109 峯本展夫「ピラミッド交渉力 「立体的+多面的思考」で「本物」の交渉力を身につける」、総合法令出版(2010)

お奨め度:★★★★★

弁証法に基づく対話による問題解決の具体的な方法と、その方法を実践するための能力構築の方法を説いた一冊。ミソは、論理だけではなく、知覚を絡めていること。これにより、論理的な解決ができない問題についても問題解決が可能になり、交渉力の幅が広がる。

漠然と対話の重要性を感じているが、実践をしようとすると、「話し合い」になってしまうという人にぜひ、読んでみていただきたい一冊。

この本で提唱しているピラミッド交渉力におけるピラミッドは、「論理と知覚のバランスの象徴」であり、「ピラミッド交渉力」とは「交渉の成功」を「相互満足」と考え、お互いの「共感」と「協力」を導き出し、お互いが「満足」する合意案を達成するための交渉力だとしている。

鍵になるのは「立体的思考力」と「すべり台アプローチ」と呼ぶものである。立体的思考力とは、意識レベルを上げていくことにより、物事のあり方を高次元で多面的に捉えていく能力である。

たとえば、コミュニケーションをよくしたいという問題がある。そこで、ホウレンソウによるピアコミュニケーションという意識レベルがある。つぎに、グループとして情報共有し、チームワークをよくするレベルがある。さらには、相互理解をし、組織を活性化し、新たなアイデアがどんどん生み出されるというレベルがある。

このようにコミュニケーションをよくする問題にも、いろいろなレベルがあり、いろいろなものの見方ができ、意識も変わってくる。これが立体的思考である。

そして、「すべり台アプローチ」とは立体的思考を行う具体的な方法である。すべり台というのは、すべり台の階段のように目的意識のレベルを上げていき、目的が決まったら手段創出をしてすべり台をすべるというメタファである。非常にイメージがよくわかる。

交渉力では相手があるので、相手とあわせてすべり台の階段を上っていき、レベルがあったところで、手段を考える必要がある。つまり、目的が共有できるまで目的のレベルを上げ、レベルがあったところで、手段を考え、実行することによって協調型の問題解決をするわけだ。

たとえば、こういう話だ。プロジェクトの状況が把握できない。プロジェクトリーダーはメンバーに日報の提出を依頼しているのだが、メンバーが忙しいから応じてくれない。そこで、目的レベルを上げ、作業に待ちができないようにすることを目的にする。そのためには、メンバーが状況をきちんと報告し、リーダーが調整することが不可欠である。このレベルで目的が合う。そこで、手段を考えるわけだが、日報である必要はない。メンバーは問題点の報告と調整事項の依頼をするようにした。

さて、立体的思考力と「すべり台アプローチ」を応用したピラミッド交渉力のアプローチとして、以下の3つのアプローチを提唱している。

アプローチ1:「目的のレベル」を上げる
アプローチ2:「共感」=目的レベルの一致を確認する
アプローチ3:手段を共有して、創発を目指す

ここで注目はアプローチ2で、共感という考えを入れていることだ。目的の一致というのは簡単だが、実際に論理的に一致したかどうかは、容易に判断できるものではない。そこで、合っているかどうかを問題にするのではなく、合っていると「共感」できるかどうかを問題にしているのだ。これが、ピラミッドの知覚の部分である。

この実践として、ZOPAの考え方をベースにした新しい概念を提案している。アプローチ2で、相手のレベルの一致が確認できるもっとも接近した高位のレベル(LUL)である。LULの見つけ方として

(1)「貢献の対象」を定義して、そのイメージを明確に示す
(2)「手段」や「下位レベルの目的」に固執することが、相手の「脅威」となることを示唆しながら、相手にとって「目的のレベル」を上げることが本質的なことであることに気づくように導く
(3)相手の自己実現欲求を高める魅力的な成果のイメージを示す

この考え方は、「影響力の法則」の考え方に近い。

後半は、ピラミッド交渉力を身につけるための能力とそのトレーニング方法が解説されている。コアになるのは立体的思考力で、

「物事や事象の構成や構造を捉えて高い次元から低い次元までのレベルとして認識する能力」

と定義されている。そして、これを中心にして、

1.抽象化能力:物事の本質的な部分を抽出して、その関係性や全体の構造を表現する能力
2.メタ認知力:自分の行動を客観的に認識して修正する能力
3.説明力:相手の理解レベルに応じて、物事や事象の内容を自在に表現する能力
4.シナリオ力:特定の情報に対する相手の反応、意識レベルの変化などの展開を先読みする能力
5.情報整理力:特定の情報を活用するために、時間とともに変化する情報を捉えて体系的に整理する能力

の5つの能力を身につけるための具体的なトレーニングを提案している。

また、これ以外の関連能力ということで、

・文脈整理力
・質問力
・傾聴力
・観察力
・感情のコントロール力

など、一般の交渉術やコミュニケーションで必要な能力について簡単な解説をしている。

この本そのものが、本書に書かれている立体的思考力やそのほかの能力がなくては読み解くのに苦労するような書き方になっている。魅力的なタイトルや構成に引かれて読み出すと、途中でギブアップしたくなるかもしれない。しかし、峯本さんの本は、それでも読み込めば、すごく役立つ。頑張って最後まで読んでみよう。

★この書籍を3名様にプレゼントします(6月22日まで)。希望される方はこちらから応募ください。

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