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2008年4月 7日 (月)

顧客満足からディライトへ!

顧客循環力という言葉を聞かれたことがあるだろうか?一言でいえば、CS(顧客満足)とES(従業員満足)のシナジーによる顧客サービス品質のスパイラル的向上を実現する組織力といえる。

顧客満足が大切だという考え方の背景にあるのは、「サービス品質が悪い」という認識である。ゆえに、品質向上の一環として顧客満足度を把握し、向上していくことに力を注いできた。

この分野はISOをはじめとして、マネジメントが相当体系化されており、書籍などでもよいものがたくさんある。お薦めの一冊はこれだ。

4820744208 日本能率協会コンサルティング、永川 克彦、蛭田 潤、江渡 康裕、渡邊 聡「お客様に対応する業務の品質管理」、日本能率協会マネジメントセンター(2007)4820744208

顧客満足というと、どうやって計測するかが問題になるが、顧客満足の評価の指標としてもっとも一般的に使われているのは、リチャード・オリバーが提唱している「期待不確認モデル」である。このモデルは、期待(E)と実績(P)に注目し、その大きさで顧客満足を決めるものである。期待と実績を比較し、実績が期待より大きいなら、顧客満足が達成していると考えるモデルだ。実績が期待を下回っている場合には、それ自体が競争力を欠いており、実績を向上させる必要がある。これが上に述べた話である。

しかし、ここで考えなくてはならないのは、期待が低ければ、いくらリチャード・オリバーモデルで顧客満足が大きくなっても競争力にはならないことだ。

したがって、期待と実績の差を小さくすると同時に、期待そのものを大きくしなくてはならない。つまり、差を小さくしながら、期待を大きくしていくというスパイラルが求められる。

最近、顧客満足度に代わって、(カスタマー)ディライトという言葉が使われるようになってきた。JTの「私たちはディライトを提供します」という見て、ディライトって何だろうって思われた方もいらっしゃると思う。妙にインパクトのあるCMだ。別のキーワードは感動である。

たとえば、顧客満足向上のコンサルティングを専門とするJ.D.パワーなどの事例を見ていると、顧客満足の向上活動が、最終的には「感動を生み出す」活動になっていくケースが多いようだ。

クリス・ディノーヴィ、J.D.パワーIV世「J.D.パワー 顧客満足のすべて 4478375208」、ダイヤモンド社(2006)

口で感動を与えるというのは簡単だが、問題は如何に実現するかである。

この方法として、3つのキーワードがあるように思う。

ひとつ目はホスピタリティである。この分野は山ほど、本がある。昔から、

4478330247ヤン・カールソン(堤 猶二)「真実の瞬間―SAS(スカンジナビア航空)のサービス戦略はなぜ成功したか」、ダイヤモンド社(1990)

のような名著が多い分野なのだが、この2~3年、ホテルサービスのベストプラクティスを応用しようといった趣旨の本がたくさん見られるようになってきた。たとえばこの本だ。
林田 正光「図解版 ホスピタリティの教科書」、あさ出版(2007)4860631978

また、ここに、最近、日本流の「おもてなし」本が出てきている。おもてなし本でお薦めは

4862760333 リクルートワークス編集部「おもてなしの源流 日本の伝統にサービスの本質を探る」、英治出版(2007)

である。この本は、おもてなしは「主客の立場が入れ替わることさえ許容し、主と客が共にその場をつくる「共創」の関係を持つことを基本としている」という視点を置き、うまくまとめている本だ。

二番目は感動だ。これも多い。上に紹介したJ.D.パワーの本もお薦めだが、最近、読んで「感動」した本がこれ。

4532313767 ロビン・レント、ジュヌヴィエーヴ・トゥール(フローレンス ミエット 石坂訳)「超高級ブランドに学ぶ感動接客」、日本経済新聞社(2008)

ホスピタリティにしろ、おもてなしにしろ、あるいは感動にしろ、その実現のメカニズムというのがもう一つの問題である。ホスピタリティであれば、「ホスピタリティマネジメント」といった形でいくつかのフレームワークが提案されている。たとえば、

4820117319 中村 清、山口 祐司「ホスピタリティマネジメント―サービス競争力を高める理論とケーススタディ」、生産性出版(2002)

などがある。しかし、あまりとっつきやすいものではなかったが、最近、「満足循環」という概念を中心にまとめた本が出版された。

4054036783 志澤秀一「ディズニーに学ぶ満足循環力―「お客様満足」+「社員満足」の秘密」、学習研究社(2008)

志澤秀一氏は東京ディズニーランドの立ち上げから人材育成にかかわってこられ、今はコンサルタントとして活躍されている方だ。

この本では、ディズニーランドにおいて、育成プログラムのバックボーンとなっている理論を紹介されている。この本で述べられているのは

(1)すべてのゲストはVIPという個性化されたメッセージの発信と、その実現の
ために必要なプロフェッショナルな仕事の定義
(2)期待を上回るサービス提供ができるような仕込みをする
(3)期待を上回るサービスを実現し、評価を受ける
(4)社員は評価に満足し、さらなる向上を図るモチベーションとする
(5)会社は発展し、より明確な個性化されたメッセージを発信する
(6)リピートが増え、さらに大きな満足をえる

というCSとESの循環(スパイラル)を作れといことだ。最近、顧客満足というより、カスタマーディライトの実現のためにESの果たす役割の議論が盛んになっているが、結局、この満足循環につきるのではないかと思う。

顧客満足は百歩譲れば現場でできるかもしれない。しかし、ディライトは千歩譲っても経営と現場の協調がない限り実現できない。それをわかりやすく説明してくれている本は、まさにこれからの経営者も現場リーダーも必読の一冊だといえる。

この本を読んでいると、どうしてもディズニーランドは特別だという人も少なくないだろう。よく聞く話で、東京ディズニーランドやJTBを目指す人は、入社試験に落ちても業界他社は受験しないという話がある。どの程度信憑性があるかはしらないが、納得できる話ではある。そこで、もう少し、一般化された話を求めている人もいるかもしれない。そんな人には、この本をお勧めしておく。

最後に、従業員満足に対して、より体系的なアプローチを探している人には、この本をお薦めしておきたい。

4818526142 吉田 寿「社員満足の経営―ES調査の設計・実施・活用法」、日本経済団体連合会出版研修事業本部(2007)

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顧客満足からディライトへ!を参照しているブログ:

» ディズニーに学ぶ満足循環力 「お客様満足」 「社員満足」の秘密 (Innovation/イノベーション壁新聞)
私自身が自社のES活動に満足しているとかしていないとかは別にして、ESはビジネス [続きを読む]

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