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2007年7月

2007年7月30日 (月)

デジタル時代のチームマネジメント

4534042647 大橋悦夫、佐々木正悟「チームハックス 仕事のパフォーマンスを3倍に上げる技術」、日本実業出版社(2007)

お奨め度:★★★1/2

このブログでも紹介したことがあるが、デビット・アレンの提唱するGTD(Getting Things Done、デジタル時代のストレスフリーな仕事術)が日本でも大ブレークしている。

仕事を成し遂げる技術―ストレスなく生産性を発揮する方法

そのきっかけにもなった大橋悦夫さん、佐々木正悟さんの個人の仕事のパフォーマンスを3倍にするためのTips集「スピードハック」に続く第2弾。

4534041837

今度はチームのパフォーマンス向上のさまざまな方法を提案している。大橋さんと佐々木さんは、どうも、日本のGTD本の代表ライターになってきた感があるが、この本も重要なことがたくさん書かれている。

この本のポイントは、たぶん、メンバーシップ。最終章でリーダーシップからメンバーシップへの移行の重要性を説いているのだが、まあ、このあたりがGTD本の所以か?

この本もチームハックしたのだろうか?その辺も知りたかった(笑)

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2007年7月27日 (金)

フロネシス(賢慮)型リーダーシップ

4757121970 野中郁次郎、紺野登「美徳の経営」、NTT出版(2007)

お奨め度:★★★★1/2

卓越した企業が、美しさとしたたかさを併せ持つ。このような企業をフロネシス(賢慮)という概念を中心に、作り上げていこうと説く一冊。

美徳の経営とは

「共通善を念頭に社会共同体の知を生かす経営」

であるとこの本では述べられている。まさに、米国型の経営に対する強烈なアンチテーゼである。非常に興味深く、また、この本の説得力を増しているのは、たくさんの事例が挙げられていることだ。

英国のコオペラティブ・バンク、バングラデシュのグラミン銀行、クラレや資生堂、財閥三井はどが、賢慮に基づく経営の例として取り上げられ、さらには、それらの企業が賢慮をどのように育成しているかを紹介している。

そして、これを人間に対するイノベーションだと位置づけており、そこに、著者たちの取り組んでいる「暗黙知」や「デザイン」が位置づけられる。そして、これから卓越した企業になっていくには不可欠であることを述べている。この中で、不祥事で有名になった企業をチクリとやっているのも見逃せない。

美徳とは何かという話だが、簡単にいえば、共通善によりもたらされるもので、CSRに通じていく概念である。その点でも、米国流の経営に対するアンチテーゼとして説得力のある話である。

昨年、小泉政権が終わり、安部政権が始まったときに打ち出したメッセージは「美しい」と「イノベーション」であった。このメッセージで漠然と思い浮かべたのがこの本にあるような内容だ。

若干迷走気味であるが、ぜひ、産業施策においても、ぜひ、このような方向性を見せてほしいものだ。そのヒントになる本である。

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2007年7月25日 (水)

女子高生の目からみた会社経営

483341855x 甲斐莊正晃「女子高生ちえの社長日記―これが、カイシャ!? 」、プレジデント社(2007)

お奨め度:★★★★1/2

TBSの日曜日のドラマで「パパとムスメの7日間」というのをやっている。父とムスメが電車事故で幽体離脱して入れ替わって、それぞれの立場で会社に行ったり、学校にいったりするというコメディドラマ。究極の世代間コミュニケーションだ。この中で、ムスメがパパとして仕事をして、常識にとらわれない発想をし、活躍する様子はなかなか興味深い。

知らないことの強さのようなものもあるが、どうも、余計なことを考えすぎている部分も少なくない。シンプルに考えると別の世界が見えてくるわけだ。問題に遭遇したときに、もし、自分が常識も組織に関する情報もまったく持っていなかったとすればどう判断するか?

これが求められるような時代になったきたように思う。

このビジネスノベルは17歳の女子高生が、父親の急死で、突然社長に―。主人公ちえにとっては、知らないことばかり、「これが、カイシャ!?」と、つぶやく「発見」の毎日といったストーリー。

この本は単に経営の入門書というだけではなく、商品開発、営業、工場での生産などを、女子高生という素人の目から見て、どう見えるかを示しているのがミソ。たいへん、わかりやすいので、入門書としてもよいが、ある程度、経験がある人も新たな発見があるのではないかと思う。

なかでも、日本組織の特徴である人間関係に関する部分が面白い。日本人は何にこだわっているのかという思いになるのではないかと思う。

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2007年7月23日 (月)

チームビルディングの初歩から実践まですべてわかる本

4532313406_2 堀公俊、加藤彰、加留部貴行「チーム・ビルディング―人と人を「つなぐ」技法」、日本経済新聞社(2007)

お奨め度:★★★★1/2

ファシリテーション技術を使って行うチームビルディングの方法をまとめた一冊。

ベストセラー「ファシリテーション・グラフィック」の著者にもう一名の方が加わって書かれた本で、テーストは前著のテーストが貫かれている。入門書であり、また、実践書としても使える一冊になっている。

まず最初は基礎編ということで、チームの基本が書かれている。独自の目線もあるが、この部分はチームマネジメントの勉強をしたことがある人なら「フンフン」と読み流していけるところだろう。

次に準備編ということで、チームマネジメントの基本的理論が説明されている。この部分になってくると、単に人を集めなさいといった話だけではなく、例えば、どのように声をかけるかといったかなり具体的なノウハウが書かれている。

技術編では、多くのチームビルディングのためのアイスブレークや、エクスサイズを紹介している。

紹介されている手法は、全体の流れが明確であり、運用の細かな工夫まで書かれているので、実際の場で使ってみようかという気にさせる。

その後、実践編として、これらのエクスサイズを使ったチームづくりの推進として、ワークショップやイベントなどの使い方、進め方を解説している。この本の中ではこの部分が最も参考になる。

中で紹介されているアイスブレークやエクスサイズが別冊子としてまとめられているのもよいし、1冊で、チームビルディングの入門から、実践までカバーされている今までにはなかったタイプの本である。

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2007年7月20日 (金)

マネジメントチームの教科書

4393641205 デーヴィッド・A. ナドラー、ジャネット・L. スペンサー(斎藤彰悟、平野和子訳)「エグゼクティヴ・チーム」、春秋社(1999)

お奨め度:★★★★

本書が出版された頃にタイトルに興味を持ち、読んだがイマイチ、ピンとこなかった。

デルタ・コンサルティングというコンサルティング会社の提唱するマネジメントスタイルなのだが、日本で考えてみれば役員会の運営のようなイメージが残っていたのだが、最近、目的があってもう一度、読み直したところ、ひょっとすると非常によい本でないかと思い当たり、ブログで紹介することにした。

この概念の背景にはビジネス環境がかつてなく複雑化し、変化することがある。このような中で、米国の企業ではエグゼクティブ・チームを結成して、CEOはそのチームのリーダシップを発揮する形に,変化してきているというというのが本書の主張だ。

そして、そのために必要なチームのデザイン、コンフリクトマネジメント、チームワーク、チーム運用についてかなり体系的、かつ、行動論的に書かれている。

日本という国は不思議な国で、強烈なリーダーシップがないにも関わらず、チームで何かをするということも上手ではない。ひょっとすると、これは表裏一体なのかもしれないが、いずれにしても、このような環境で考えれば冒頭に述べたように、経営チームというのは役員会のイメージなのだが、日本でも日産のゴーンが注目されて以来、プロジェクト的(有期的)ではあるにしろ、このような考え方のトップマネジメントが行われるようになってきていると思う。

ただ、それは変革場面であって、日常的に行われるのはこれからだと思うが、プロジェクトマネジメントではこのようなマネジメントが日常的に行われだしている。

そのような目でこの本を読んでみると、これはトップマネジメントに限ったことではなく、プロジェクトマネジメントや組織マネジメントチームの運営に対しても適用できるスキームであることがわかった。

その意味で、ミドルマネジャーや、プログラムマネジャーの方にぜひ読んでみてほしい。

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2007年7月18日 (水)

実践マネジメントの金字塔

4532313368 マーク・マコーマック「ハーバードでは教えない実践経営学~ビジネス界の心理戦を勝ち抜け!」、日本経済新聞社(2007)

お奨め度:★★★★★

マネジメントには普遍の原則がある

とすれば、ドラッカーが膨大な著作で述べていることではなく、マーク・マコーマックがこの1冊の本で述べていることではないだろうか。マコーマックの名前を知らなくても、IMGという会社を知っている人は多いのではないだろうか?IMGの生みの親がマコーマックである。

ちょうど、サッカー界で中田選手が出てきたくらいから、日本でもスポーツ選手のマネジメントとマーケティングビジネスは認知されるようになってきたが、マコーマックがIGMを設立したのは1960年代である。いまや巨大な市場になっているこのビジネス分野を確立した人である。

マコーマックがこの本を上梓したのは僕が大学院を出て会社に入った年である。会社に入って5年目にあるきっかけで原書を読んだ。間違いなく、僕のマネジメント感に大きな影響を与えている。

突拍子のないことが書いてある本ではない。「人間」、「営業と交渉」、「企業経営」という非常にオーソドックスな分類でそれぞれを部として、基本事項を淡々と述べている。

例えば、人間だと

・人の心と読む

・印象付ける

・優位に立つ

・出世する

の4項目が並んでいる。

哲学はあるが、理屈っぽくない(ただし、心理学的にはたくさんの理論があるのだろうと思う)。これが20年以上、全世界で20年以上、読み続けられている理由だと思う。

みなさんもぜひ、手にとって見てほしい。マネジメント感が変わるかもしれない。すくなくとも、マネジメントとは何をすることかというのがわかるだろう。

蛇足だが、この時期に日経新聞社が翻訳に踏み切ったのは慧眼だと思う。いやというほど、類似書が出回りだしているからだ。本物を読んでみよう!

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2007年7月16日 (月)

アメリカ国防総省直伝 プロジェクト・マネジメント

4534042507 岩田治幸「アメリカ国防総省直伝 プロジェクト・マネジメント実戦教練ブック」、日本実業出版社(2007)

お奨め度:★★★★1/2

タイトルのとおり、米国国防省で使われ、自衛隊にも持ち込まれているプロジェクトマネジメントについて、概要と、重要なコンピテンシー(手法、ツール)をまとめた一冊。

日本でもそうだが、プロジェクトマネジメントをプロトコルとして決めているのは、商務・経済・産業といった分野と軍事、および、宇宙が圧倒的に多い。英国だと、PRINCE2は商務省の策定だし、日本ではいえばP2Mが経済産業省の策定である。

米国ではPMBOKがメジャーであるためか、あまり、国務関係のプロトコールになっているプロジェクトマネジメントは表にでてこないが、著者の経験からするとNASAのプロジェクトマネジメントはすごく進んでいる。おそらく、国防省も相当進んでいるものと思われるが、この本を読んでみると、その一端を垣間見ることができる。

特に、戦略目標からプロジェクトに落とし込む部分というのは、PMBOKやPRINCE2では見られない実践的な手法があることがわかる(P2Mはこの部分にチャレンジしているが、残念がらなこんなに精錬されていない)。

その意味で、日本のビジネスの中でのプロジェクトマネジメントとして実践的かどうかは別にして、プロジェクトの上流側をしっかりと把握しておきたい人にはお奨めしたい一冊である。

もちろん、多くの部分はPMKOBに既に取り込まれているので、プロジェクトマネジメント本としての書くべきことは書いてあるし、また、解説方法が難しいことを妙な単純化をせずに、図表をうまく使ってきちんと説明しているもの好感が持てる。これも米国流ということだろう。

ある出版社の人が今年から来年にかけて、第2次のプロジェクトマネジメント本ブームになるといっていたが、もし、そうなったとしても生き残れる一冊だと思う。

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2007年7月13日 (金)

改善を科学する

4820744372 オフィス業務改善研究会「業務改善がよくわかる本―すぐに実行できるオフィス業務の改善アイディア」、日本能率協会マネジメント 出版情報事業(2007)

お奨め度:★★★★1/2

オフィスワークの業務改善の視点、方法、スキルをまとめた1冊。

業務改善を以下の8つのアクションにまとめている。

1.テーマの設定する
2-1.現状把握・監察する
2-2.現状把握・取材する
2-3.現状把握・図式化する
2-4.現状把握・定量化を試みる
3.問題点をまとめる
4.問題を掘り下げ、原因を探る
5.改善方法を決める
6.改善策を決める
7.改善を実行する
8.改善レポートを作成する

そして、それぞれのついて、具体的な進め方を解説している。

その上で、36のベストプラクティスを提示して、それぞれの事例でどのような方法で改善を進めて行ったかを述べている。

いままでありそうでなかった本だ。

戦略経営の3つのイネーブラは人材とITと業務改善である。

前の2つがいろいろと体系化されているのに比較すると、改善に関する体系的なアプローチの本はなかったし、本以前に、改善はどろどろとやるものだと考えられていた。一方で、問題解決の本を読むと、結構な数の例題が改善を取り上げている。ずっと、こんな本が出ないかなと思っていたが、やっと出たという感じだ。

特に、マネジャーの方は、ひとごとだと思わず、一度、読んでみて欲しい。人材育成の方向性のヒントになるだろう。

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2007年7月11日 (水)

幻の組織構築論

4047100919 山本七平「日本人と組織」、角川書店(2007)

お奨め度:★★★★1/2

日本人論の金字塔だといわれる「日本人とユダヤ人」などの著書で多くの読者を持つばかりでなく、日本型組織論、日本型経営など、多くの分野での研究に多大な影響を与えている日本研究者山本七平先生の幻の組織論といわれる原稿がついに書籍化された。

この本は70年代にかかれたものである。従って、書かれていることについてはある程度、結論が出ていることも多い。その中にはもちろん、現実となっていない論考もあるが、重要なところでは恐ろしく当たっている。

組織のコミットメントに宗教(神)の議論を持ち込み、日本人の組織観の特殊性を説明したのが山本先生である。この本に書かれている大枠の話は他の研究者や評論家によって引用されることが多く、有名なものが多いのだが、この本を読むと、その背景の考え方が非常によくわかる。

この10年くらい、日本の企業も山本先生の描かれた日本型組織から徐々に外れつつあるが、そこに大きな軋みが生じつつある。なぜ、軋みが生じるか、どのように改革すればよいのかを明確に示されている本書は、このような時代であるからこそ、一読の価値があるといえよう。

マネジメントに関わるすべての人に一読することをお奨めしたい。

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2007年7月 9日 (月)

プロフェッショナルを育てる、プロフェッショナルに成長する

4495375814 松尾睦「経験からの学習-プロフェッショナルへの成長プロセス」、同文舘出版(2006)

お奨め度:★★★★1/2

人はいかに経験から学び、プロフェッショナルへと成長するのかという命題に対して、経験に焦点を当てて、学習メカニズムを明確にしようとした本。

本書は、人材育成の7割は経験によるものだとし、その経験をどのように成長に結び付けていくかが人材育成のポイントになると説いている。結び付けの視座として、組織活動、マーケティング活動など、現実の経営活動の中で学習が機能するかを説いている。その意味で、研究書ではあるが、かなり実践的であり、実務に役立つインプリケーションがたくさん盛り込まれている。

また、ケースもふんだんに盛り込まれているので、書かれていることの理解も容易にできる。さらに、心理学的な視点も踏まえているので、自分自身の成長を考えるに際しても参考になる一冊である。

プロジェクトマネジャーに代表されるプロフェッショナル人材を育てることを課題とする人材育成担当者にぜひお奨めしたい一冊である。

また、マネジャーは、この本と「最強組織の法則」など、組織学習の本と併せて読むと、個人の成長(自己マスタリング)と組織の学習の関連性も想像でき、面白いだろう。

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