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2007年6月

2007年6月29日 (金)

顧客起点のマーケティング

4492555838 平井孝志「顧客力を高める、売れる仕組みをどうつくるか」、東京経済新報社(2007)

お奨め度:★★★★

この本もまた、「組織力を高める」の著者の一人が書いたマーケティング論。顧客中心型のマーケティングと、その具体的な実現方法、仕組み作りについて述べている。

顧客力とはあまり耳にしない言葉だが、著者のいう顧客力は

 顧客起点で売れるモノやサービスを継続的に生み出す能力

であり、これは

 マーケティング脳:顧客と共鳴できるユニークで柔軟な発想力

 場の構築力:顧客のまわりに業務連鎖を設計・構築する能力

の2つの掛け算で生まれるというのが、この本の考えである。

そして、この本では、マーケティング脳の作り方、および、場の構築プロセスを具体的に解説している。デル、スターバックス、トヨタなどを例にとりながら説明されているので、納得性がある。

最後に、顧客力を組織力に高める方法について述べている。前著の組織力を高めるとの関連がここにあるようだ。

その方法とは、マーケティングの専門部隊を置き、それを組織のマーケティング脳にしていく。そして、その部隊を中心に

・場の見える化

・標準化の推進

・現場での適応化

の3つを行うことだという。この部分はさらなる検討がほしいところだが、方向性としては共感できる。

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2007年6月27日 (水)

オーバーアチーブの育て方

4492532323 古田興司「オーバーアチーブ、組織力を高める最強の人材」、東洋経済新報社(2007)

お奨め度:★★★★1/2

古田氏の前作、「組織力を高める~最強の組織をどうつくるか」のまとめであったオーバーアチーブ(期待を超える)人材の育成が重要だという結論の続き。

オーバーアチーブする人材になるにはどうしたらいいのか、そんな人材を育てるにはどうすればいいのかを具体的に示している。

そのアプローチとして、まず、人材像としてハイパフォーマという人材像を示している。これは

組織の中で働きながら、組織に没頭せず、仕事の質とスピードを追求し

さらには期待を応える結果を出すことにこだわり、

その一方でチームを牽引し、チーム全体の組織力を高める高能力人材

というものだ。このためには、

(1)気概

(2)着眼、解の導出力

(3)チームへの影響力

の3つの要件が必要だという。この本では、この3つの要件をさらにコンピテンシーにわけ、その育成方法を具体的な訓練方法を述べながら解説している。

また、最後にそれらをまとめる形で、6つの基礎トレーニング、4つの実践トレーニングを提案している。

【基礎編】

(1)キャリアプランを考えさせる

(2)新聞を読ませる・朗読させる

(3)本を読ませる・文章を書かせる

(4)人前で発表させる

(5)新しいことを勉強させる

(6)半分の時間でやる練習

【実践編】

(1)役員会の議事録を作成させる

(2)タスクフォースチームを活用する

(3)ウィークリーレポートを書かせる

(4)研修の企画・運営をさせる

感覚的によく合う。特に実践編は効果的な方法だと思う。マネジャーのみなさんも試してみてはどうだろうか?

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2007年6月25日 (月)

ISO思考

4334934110 有賀正彦「「不祥事」を止めるISO思考」、光文社(2007)

お奨め度:★★★★

このブログで、光文社ペーパーバックスの本を取り上げるのははじめてだが、主要キーワードに英語がつけてあるというこのシリーズはなかなか、よい。

ISOのドキュメントは、昔から、対訳本が必ず出ている。結局、日本語に翻訳したときに、ニュアンスが伝わらない部分があるからだろう。

この本はISOそのものの本ではなく、最近、世間を騒がせたいわゆる不祥事、不二家、関テレ、社会保険庁を取り上げ、なぜ、不祥事が起るのか、不祥事の発生を防ぐにはどうすればよいかを述べ、その対策を打っていくときに、ISOの考え方、あるいはシステムの導入が如何に有効であるかを述べた本である。

これらの不祥事はひと言でいえば、日本流の組織文化の悪い部分が原因になっている。そこに新しい組織文化を導入しなくてはならないが、その概念は、そもそも日本語にはない。そこで、ISOという話になる。

その中で著者がもっとも重要だと主張しているのは、顧客重視ということだ。これは、ISOの最もベースになっている発想である。著者の主張は、顧客を重視した仕事をすれば、そもそも、こんな不祥事は起らないだろうと述べている。

顧客重視というと、みなさんはどういうニュアンスで受け取られるだろうか?顧客にこびるとはいわないまでも、顧客の主張を受け入れると解釈される人が多いのではないだろうか?

この言葉のISOでの用語は、customer forcus である。つまり、商品やサービスを顧客が使うところにフォーカスして、品質を考えようという意味だ。結果として、顧客満足が生まれる。

書いていることはそんなに難しいことではないが、このように英語の意味を吟味しながら読んでみると、非常に奥のある一冊である。ISOの思想を知りたいと思うのであれば、ぜひ、読んでみてほしい。

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2007年6月22日 (金)

変革を定着させる

4862760074 佐藤文弘「チェンジマネジメント―組織と人材を変える企業変革プログラム」、英治出版(2007)

お奨め度:★★★★1/2

企業変革の本というと、話は分かるが具体的にどうするの?という本が多い。その中で、定着に重点を置き、具体的な施策を述べている貴重な一冊。

この本では、

プラニング

  ⇒コミュニケーション

    ⇒教育

      ⇒サポート

というステップで進めていくとし、各ステップで使う手法やツールについて解説している。

前提として、

 ・人はルールを守らない

 ・組織は戦略に従わない

といった現実的な(問題のある)前提で展開されているので、現実的である。このあたりも、よくある、それなら変革はいらないだろうという前提の変革本とは一線を画している。

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2007年6月20日 (水)

組織を巻き込むチーム問題解決

4788907461 福山穣「チームで取り組む問題解決の考え方・すすめ方―組織全体を巻き込んで現状打破する方法論」、実務教育出版(2007)

お奨め度:★★★★

チーム問題解決について書かれた実践書。

基本的な話は要因追求型とビジョン設定型の2つの方法であるが、読者の経験からくるさまざまなノウハウが書かれているので、読んでいて、役にたつことが多い。また、チーム問題解決を阻害する原因についても整理されているので、取り組みの切り口も見えてきやすい。その2つの意味で、実践的な一冊である。

全体的なトーンとしては、チームによって問題解決をし、チャレンジをしようというトーンだ。それを小さなリスクで行うために、組織のサポートが問題になってくる。それを如何に引出すかが問題解決のひとつのポイントになるが、その方法について具体的に示されている。

また、マネジメントサポート、組織サポート、人材開発の3つの視点から組織としてはチームのそのようなニーズにどう応えていくべきかについても述べられている。

チーム問題解決というと何か、難しいことをしているように思うが、この本では、非常に現場的で、泥臭いことをやろうといっている。そのため、現場の現実の問題に容易に適用できるだろう。

その意味で、類書がなく、ぜひ、読んでおきたい一冊である。

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2007年6月18日 (月)

プロフェッショナルの人材開発のベールをめくる

4779500583 小池和男編「プロフェッショナルの人材開発」、ナカニシヤ出版(2006)

お奨め度:★★★★

新聞記者、研究者、革新的マネジャー、ファンドマネジャー、融資審査マンなどのプロフェッショナルがその技能をどのように開発されていくかをフィールド調査によって明確にした一冊。

小池先生の指導によるフィールドワークだけあって、どの論考もかなり深く突っ込んであり、かつ、簡潔にまとめられている。技能開発に携わる人にとってはもちろんだが、いわゆるプロフェッショナル人材を育成しなくてはならない人にはとても参考になる本である。

また、読み物としても面白いので、人材開発を仕事にする人だけではなく、プロフェッショナル自身が読んでも、自らの能力開発について気づきのある一冊である。

難点は、ここで選ばれている職業がプロフェッショナルという集団から見たときに、どの程度、一般性があるのかがよく分からない点。例えば、研究者と医者はその技能開発が異なるように思うし、販売員のようなサービス系の技能を持つプロフェッショナルも異なるように思う。

ぜひ、今後、このほかのいろいろなプロフェッショナルについてもフィールドワークをして、第2弾、第3弾を作ってほしい。

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2007年6月15日 (金)

31の考察課題と103の演習課題で身につくリーダーシップ

4492532277 大中忠夫「リーダーシップ強化ノート―変革ビジョンの設計と実行のための演習帳」、東洋経済新報社(2007)

大中氏は、グロービスのMBAシリーズで「リーダーシップ」という本を書かれている。このブログでも取り上げている。

行動に注目したリーダーシップ

https://mat.lekumo.biz/books/2006/04/post_e936.html

このブログでも書いたが、この本はリーダーシップ本の中で、特筆すべきものだと思う。これまでリーダーシップ本というと理論本とハウツーものしかなかったが、この本は理論をベースにした行動の方法を解説した本である。

今回の「リーダーシップ強化ノート」は、この流れで、演習として具体的な課題をあて、考えさせることによって、リーダーシップを強化を図ろうという画期的な書籍である。

この本は、31の考察課題と103の演習課題に60時間程度をかけて取り組みながら、リーダーシップ4領域行動、EQリーダーシップ、期待理論、マズローの5段階欲求、の4つの理論モデルを日常行動に適用し、リーダーシップ能力を体系的に「考える」ような構成になっている。

考察課題は、論述的なものだけではなく、実際に自分の行動をセルフチェックしてその結果を見ながら考察するようなものもある。

リーダーシップのセミナーは数多いが、本気で身に付けたいのであれば、セミナーにいくよりもこの本を繰り返し、読んだ方が効果的だ。と書くと、極論かもしれないが、そんな可能性を感じさせてくれる本であることは間違いない。

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2007年6月11日 (月)

直感がビジネスを成功させる

4478000719 アンディ・ミリガン、 ショーン・スミス(酒井光雄監訳、西原徹朗、松田妹子訳)「できない人ほど、データに頼る」、ダイヤモンド社(2007)

お奨め度:★★★★1/2

ビジネスが複雑になってくる中で、データに依存してビジネスを進めていくことの危険性を指摘し、また、どのようにこの危険を回避していくかを解説した1冊。

この本では特に「感じる」ことを重視して、

 見て、感じて、考えて、実行する

というモデルを提唱し、そのモデルをベースにして主張をしている。ポイントはいかの通り。

見る:モカシンで歩く

 ・専門家の目

 ・ソフトフォーカス

 ・全体像を描けるか

感じる:あなたも人間です

 ・感情を素直に出そう

 ・顧客と接点を持とう

 ・共感を持とう

考える:くだらないアイディアなどない

 ・原因と結果

 ・理想的な世界

 ・なんでできないのか

実行する:実行あるのみ

 ・基本的なこと

 ・ちょっとしたマジック

 ・機能しているか

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2007年6月 8日 (金)

ビジョンマッピング

4569655505 吉田 典生「ビジョンマッピング やる気を創る技術」、PHP研究所(2006)

お奨め度:★★★★

吉田典生さんというと、斬新な視点からの人材育成論が印象的である。たぶん、最も多くの人が読んでいるのは

吉田典生「なぜ、「できる人」は「できる人」を育てられないのか? 」、日本実業出版社(2005)

4534040032

4534040741吉田典生「 「できる人」で終わる人、「伸ばす人」に変わる人」、日本実業出版社(2006)

の2冊ではないかと思うが、この本は、これらの本の本質が何かを明確に教えてくれる一冊である。

展開の中で、いまもっとも大切な「ビジョンマッピング」へ落とし込む。その具体的な手法と意義をつかみ、自分に応用できることを目的に書かれている。

ある自動車販売代理店で生じた危機からの再生物語をネタにして

危機―会社が消える

出発―何のための仕事なのか

火種―生命力の源

接続―意味づける力

連携―協働する場

促進―ギャップを埋める

共創―一枚の絵を全員で描く

管理―変わらない姿勢で変え続ける

の流れの中で、「思い」がいかに凄い力を持つかを説こうとしている。ストーリー仕立てで、かつ、簡潔に書かれているので、ポイントが手に取るように分かる。

「仕事が面白くない」、「部下にやる気がない」、「組織力をもっと高めたい」といった悩みを持つマネジャーにお奨め。

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2007年6月 6日 (水)

イノベーションの実態

4569690661 片山修「イノベーション企業の研究 日本型成長モデルは現場がつくる」、PHP研究所(2007)

お奨め度:★★★★

日本のイノベーション書籍は学術研究的なものが多い。理論的な仮説を持ち、その仮説を検証する形で書かれている本が多い。そのような中で、研究者というよりはジャーナリストの目から見て、イノベーションによる成長企業に何が起っているかをまとめたこの本は、イノベーションのヒントを得る上で、非常に貴重な一冊だと思う。取り扱っている視点もユニークである。企業は、何かとよく取材される企業が多いが、

・キヤノンを支える本社力
・JR東日本の事業創造力
・ホンダのモノづくり基礎力
・トヨタのブランド創造力
・日本精工の部品力
・全日空の構造改革力

という風に独自の視点で取材をし、分析をしている。というか、実はこのテーマは、外部からこれらの企業をみたときに、真っ先に見える顔というのはこの当たりではないかと思う。その意味で、ジャーナリズム本であるし、読んでいて楽しい。

この中で、著者が着目しているのは、トップとのコミュニケーションに裏打ちされた現場力である。例えば、キャノンの本社力であれば、

・トップが現場にいけば、現場は刺激をうけ、張り合いを倍加させる

・全体最適がただのお題目ではなく、会社全体がひとつになって動くような仕組み作りをしなくてはならない

・経営のスピードはコミュニケーションの伝達の速さと深さによる

といったポイントをあげている。

プロジェクトX的な本はあるが、組織の取り組みをこのような視点で取り上げた本は珍しく、ありそうでなかった本。

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