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2007年3月

2007年3月31日 (土)

組織コミットメントの構造

4820118536_01__aa240_sclzzzzzzz_v2508852_4 鈴木 竜太「自律する組織人―組織コミットメントとキャリア論からの展望」、生産性出版(2007)

お奨め度:★★★★1/2

新進気鋭の組織論の研究者が、一般の人に向けて書いた組織コミットメント論。組織論の専門家でなくてもわかる言葉で、非常に研究者らしい視点からかかれており、一般的な啓蒙書に比べると考えさせられる部分が多い。

帯に以下のような質問がある。

・希望に溢れた新入社員のコミットメントが2~3年で低下し、その後、持ち直すのはなぜか

・いやな会社でも長く居れば居るほど、転職しづらく感じるのはなぜだろうか

・チームで勝利するためには、スタメンのやる気ではなく、補欠選手のモチベーションを上げるのが有効なのはなぜか

・成果主義を徹底すると、職場の生産性が落ちてしまうのはなぜだろうか?

といった興味半分で知りたいことは、深刻な問題まで解く鍵がコミットメントにあるというのがこの本で紹介されるさまざまな研究からわかる。特にキャリア論から、コミットメントについて考察している。

人事担当者だけではなく、マネジャーやプロジェクトマネジャーならぜひ、読んでおきたい一冊だ。

2007年3月30日 (金)

プロジェクトチーム崩壊を防ぐ極意

4822283135_01__aa240_sclzzzzzzz_v4254531 伊藤健太郎「プロマネはなぜチームを壊すのか 知っておきたいプロジェクトのヒューマンスキル」、日経BP社(2007)

お奨め度:★★★★

PM書籍のベストセラー「プロジェクトはなぜ失敗するのか」の伊藤健太郎さんの待望の新作。

本の内容とは直接関係のない話題から入る。前作でも感じたのだが、伊藤さんの本はこの日経BPのシリーズが本当によく似合う。このシリーズには

デマルコの一連のシリーズ https://mat.lekumo.biz/books/2005/07/post_0be1.html

ジム・ハイスミスのアジャイルPM https://mat.lekumo.biz/books/2005/06/post_8e2b.html

ヨードンのデスマーチ https://mat.lekumo.biz/books/2006/06/post_7e70.html

など、日本のプロジェクトマネジメントに影響を与えた本がずらっと並ぶ。伊藤さんの本も間違いなく、その一冊だ。このシリーズの特徴は、深いことを、簡潔・平易に書いてあり、非常に考えさせることだ。

さて、今回のテーマは、チームマネジメント、リーダーシップ、ヒューマンスキルという伊藤健太郎さんの得意分野である。結構、深い持論がやさしく簡潔に書かれていて、納得しながら読める。かなり、ポイントが絞られているので、セミナーを受講しているような感じで、すっと頭に入ってきて、かつ、残る。

同時期に峯本さんもプロジェクトマネジャーのプロフェッショナル責任に関する書籍「プロジェクトマネジメント・プロフェッショナル」を出版されたが、伊藤さんの本もまず、「責任」から話が始まる。非常に現実的で、現場ベースでの責任論が展開されている。納得。

次にチームマネジメントの話が続く。ベースは行動規範と動機付けの話だが、両者の関係の説明が薄いので、なにがいいたいのか、少し、わかりにくい部分がある。でも、個々に書いてあることは納得性が高い

そのあと、組織のサポートのあり方の章があり、最後にプロジェクトマネジャー像が述べられている。硬い話だけではなく、問題形式で説明されているので、楽しく読める。

この本、ぜひ、PMPの人に読んでほしい。PMBOKの形式的な知識に魂が入るだろ。

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2007年3月26日 (月)

評価、教育、動機づけ

4478000409_01__aa240_sclzzzzzzz_v4228607 DIAMONDハーバード・ビジネスレビュー編集部「人材育成の戦略―評価、教育、動機づけのサイクルを回す」、ダイヤモンド社(2007)

お奨め度:★★★★

ハーバードビジネスレビューに掲載された人材育成に対する優秀な論文を選定して一冊の本にまとめている。内容は目次を見ていただきたい。

過去に読んだもの、読んでいないものの両方があったがどちらもよみごたえがあった。15本の中から3本だけ上げるとすれば、1本目は「行動するマネジャーの心得」。ケースに基づき、

・自分の仕事は自分で管理する(マッキンゼー:ジェシカ・スパンジン) 
・必要な資源はみずから調達してくる(ルフトハンザ航空:トーマス・サッテルバーガー) 
・代替案の存在を認識・活用する(コノコフィリップス:ダン・アンダーソン)

が重要だと述べられてる。

二番目は「リーダーシップR&D」。

常人には不可解な優れたリーダーの意思決定
複雑系の科学こそマネジメント研究の新たな方向性
「認識科学」と「設計科学」の融合
リーダーシップR&Dの「R」
リーダーシップR&Dの「D」
知識教育ではリーダーシップを開発できない

といった項目について述べられている。

三番目は「リーダーシップ開発は一人ひとり異なる」。

リーダー教育の多くが個性を無視していることを主張した上で、マネジャーの四つのタイプにわけ、それぞれに適したリーダー能力の開発方法について述べてる。

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2007年3月25日 (日)

ITスキル標準はITエンジニアを幸せにするか?

4798111821_01__aa240_sclzzzzzzz_ 高橋秀典「ITエンジニアのための【ITSS V2】がわかる本」、翔泳社(2006)

お奨め度:★★★1/2

ITスキル標準について日本でもっともよく知っているスキルスタンダード研究所の高橋代表の著書。

ITスキル標準自体はその名のとおり標準であり、どのように活かすかは顧客側に任されており、さまざまな活用方法が考えられる。製品開発のグルである東京大学の藤本隆宏先生の言葉を借りると、非常に多義性の高い標準である。多義性の話に興味がある方は、ぜひ、こちらの本を読んでみてほしい。

453231139x_09__aa240_sclzzzzzzz_ 藤本隆宏「日本のもの造り哲学」、日本経済新聞社(2004)

ITスキル標準のひとつの顧客であるIT系の企業や、情報システムオーナー企業はこの多義性を背景に、自社に如何に適用するかを一生懸命考えている。相応なリソースを使って研究し、構築をしている。

ところがITスキル標準には、もうひとつの重要な顧客がある。IT業界で働くエンジニア、コンサルタント、インストラクター、営業マンなどである。こちらの顧客に対しては、派遣業などが若干、自社の事業の枠組みの中で支援をしているが、それ以外には、あまり、手当てがされていないのが現状である。

そのような状況の中で、企業にとっての活用だけではなく、個人にとっての活用方法お、本という個人にとって利用しやすい形で、非常に見識のある人が書いた本としてこの本は評価できる。どうすれば、ITスキル標準を有益に使えるかという視点から書かれた唯一の本だといってもよいだろう。

ただ、残念ながら、本書では、組織の議論と個人の議論の接点や統合があまり明確になっていない。藤本先生のいわれる多義性の解消ができない限り、個人も幸せにならないし、とくにSIのような知識労働集約型のビジネスをやっている企業の業績はよくならないだろう。

IT業界というのはCSとESがばらばらの施策として行われている企業が多く、そのため、キャリアにおける組織の利益と個人の利益の現実的な統合がなかなか、見えてこないのだと思うが、ぜひ、この点をぜひ明確にしてほしいと思う。

さらには、3番目の顧客である顧客のビジネスオーナーに対する考察もほしい。この2点が加われば、さらに意義深い本になるだろう。

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2007年3月23日 (金)

サービスという活動を見直す

4903241424_01__aa240_sclzzzzzzz_v4254523 ジェームス・トゥボール(小山 順子、有賀 裕子訳)「サービス・ストラテジー」、ファーストプレス(2007)有賀 裕子

お奨め度:★★★★1/2

サービスマネジメントの専門家であるジェームス・トゥボール博士が、サービスとは何かという問題をきちんと定義し、今後へのソリューションを示した本。

この本に述べられているように、ものづくりとサービスの関係というのはこの20年くらい、ずっともやもやとしてきた問題である。特に、BTOが常識になり、マーケットインが当たり前のように行われるようになって以来、サービスとものづくりの境界が消え、サービス行も製造業も何らかの形での変革を迫られてる。

ところがあまり変わっていない。双方とも、自分の領域だけでビジネスをしようとしている。この現状に対して、この本は、

サービスミックス

サービストライアングル

サービスインテンシティマトリクス

価値創造サイクル

クオリティギャップ

などのツールを提示し、サービスマネジメントとして、サービスとものづくりの融合の方法を提案している。

この本に目を通して、真っ先に進めたいと思ったのはSI企業のマネジャーやシニアマネジャーである。非常に学ぶところの多い本だと思うので、ぜひ、読んでみていただきたい

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2007年3月21日 (水)

トヨタの秘密

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ジェームズ・モーガン (著), ジェフリー・ライカー(稲垣公夫訳)「トヨタ製品開発システム」、日経BP社(2007)

お奨め度:★★★★1/2

トヨタウエイの著者 ジェフリー・ライカーによるトヨタの製品開発システムのエスノグラフィ。日米の研究開発拠点12箇所で40人の開発担当者から延べ1000時間に及ぶ聞き取り調査を実施して書き上げた本。

トヨタウエイについてはこちらの記事を参照。

トヨタウエイの実践

トヨタといえば現場とよい意味で泥臭い改善活動の印象がつよい。しかし、マネジメントの研究者のレベルでは、むしろ、製品開発システムに関心が高かった。東京大学の藤本先生、神戸大学の延岡先生をはじめとし、多くの経営学の研究者がトヨタのシステムを研究し、論文を書いている。実際のところ、初代イプサムに代表されるリードタイムの大幅な短縮など、興味深い点は多い。

それらの本と比べるとこのライカーの本は実務者にとって参考になる。あまり、大きな仮説を設定せずに、エスノグラフィーとして淡々と調査、観察したことが書かれており、本当のところの実態がよくわかる。

チーフエンジニア制度、セットベースのコンカレント・エンジニアリング、平準化プロセスなど、トヨタ独自のシステムが丁寧に解説されているので、読んでいて、上記の論文ではわからないことがわかる部分がずいぶんある。特に興味深いのはこれらの制度の背景にあるルールを以下のような原則としてまとめていることである。

 プロセスのサブシステム:リーン製品開発システム原則の1~4
   原則1 付加価値とムダを分離できるように、顧客定義価値を設定する
   原則2 選択肢を十分に検討するため、製品開発プロセスを設計上の自由度が一番高い初期段階にフロントローディングする
   原則3 平準化された製品開発プロセスの流れをつくる
   原則4 厳格な標準化を使ってばらつきを減らし、フレキシビリティーと予測通りの結果を生む

 人のサブシステム:リーン製品開発原則の5~10
   原則5 開発を最初から最後までまとめるチーフエンジニア制度をつくる
   原則6 機能別専門能力と機能間統合をバランスさせる組織を採用する
   原則7 すべての技術者が突出した技術能力を持つようにする
   原則8 部品メーカーを完全に製品開発システムに組み込む
   原則9 学習と継続的改善を組み込む
   原則10 卓越性とあくなき改善を支援するカルチャーを醸成する

 ツールと技術のサブシステム:リーン製品開発システム原則の11~13
   原則11 技術を人やプロセスに適合させる
   原則12 組織全体の意識をシンプルで視覚的なコミュニケーションで合わせる
   原則13 標準化と組織的学習に強力なツールを使う

ただし、このようなトヨタ方式が有効かどうかを判断するのは読者である。これが有効であるという証拠、論拠はない。唯一あるのは、もうすぐ、世界一の自動車メーカになるだろうということだけだ。

逆にいえば、別の業界の人(たとえば、製薬)がベストプラクティスとして読んでも訳に立つ内容ではないかと思う。

それから、いくつかの開発ケースが採録されている。これらは読み物としても面白い。

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2007年3月19日 (月)

イノベーションを成功させる組織

4901234986_01__aa240_sclzzzzzzz_v4414069 トニー・ダビラ、マーク・エプスタイン、ロバート・シェルトン(スカイライトコンサルティング訳)「イノベーション・マネジメント 成功を持続させる組織の構築」、英治出版(2007)

お奨め度:★★★★1/2

イノベーションのマネジメントを組織の視点から書いた本。イノベーションは偶発するものではなく、管理するものであるいうスタンスに立ち、具体的な方法を述べている。

その中心になるのが経営陣の「7つのルール」。

(1)イノベーションの戦略とポートフォリオを決定する際に、強力なリーダーシップを発揮する

(2)イノベーションを階差の基本精神に組み込む

(3)イノベーションの規模とタイプを経営戦略に合わせる

(4)創造性と価値獲得のバランスをうまくコントロールする

(5)組織内の抵抗勢力を抑える

(6)社内外にイノベーションのネットワークを構築する

(7)イノベーションに適切な評価指標と報奨制度を設ける

の7つである。

この本では、この7つのルールを実行していくための具体的な方策について解説している。経営者や組織マネジャーはもちろんであるが、現場のマネジャーにも読んでいただきたい一冊である。

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2007年3月16日 (金)

マネジャーの教科書

482074299x_01__aa240_sclzzzzzzz_ 日本能率協会管理者教育プロジェクト「実務入門 管理者必携 マネジャーの教科書」、日本能率協会マネジメントセンター(2005)

お奨め度:★★★★

ありそうで無かった本。マネジャーの仕事を行動レベルで具体的に解説し、チェックリストやフォーマットなどのツールも紹介している。

一人の著者が書いた本ではなく、JMAMの5人の研修講師が作る管理者教育プロジェクトが書いているので、分担はあるが、全体としては非常にバランスの取れた内容になっている。このバランスがこの本の最大の特徴だといえる。

内容的には

・目標達成のために全員でプラニングする

・組織の運営方法を設計する

・メンバー一人ひとりの能力を発揮させる

・メンバーと積極的にかかわる

・プロセスマネジメントを強化する

・目標達成を阻害する問題を解決する

・メンバーが納得する評価を行う

といったものになっている。また、最初にマネジャーの仕事を鳥瞰した章が設けられており、これで全体がわかった上で、各論に入っていくようになっている。

まとめ方は1項目見開き1ページにまとめられており、簡潔で実践的である。新任のマネジャーはもちろんだが、ベテランのマネジャーにも自分のすべき活動の全体像を体系的に確認するために一読をお勧めしたい。

なにより、専門職系のマネジャー(人事マネジャー、マーケティングマネジャー、プロジェクトマネジャーなど)が読むと非常に役立つ内容である。

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2007年3月13日 (火)

フランクリン・コビー流プロジェクトマネジメント

4906638619_01__aa240_sclzzzzzzz_v4196786_1 リン・スニード、ジョイス・ワイコフ(フランクリン・コヴィー・ジャパン訳)「PQプロジェクト・マネジメントの探究」、キングベアー出版(2007)

お奨め度:★★★★1/2

7つの習慣で有名なフランクリン・コビー社のプロジェクトマネジメントスキルPQ(Planning Quest)の解説書。

PQには3つのポイントがある。

一つ目は時間管理であり、この部分には、同じくフランクリン・コビーの「TQ(Time Quest)」を取り入れている。TQについては、目標の設定、計画的行動、そして安心領域からの脱出を主軸にした時間管理で、効率だけではなく、「心の安らぎ、すなわち充足や幸福が最高潮に達した感覚」に到達することを目的としている。

4906638058_09__aa240_sclzzzzzzz_ハイラム・スミス(黄木信、ジェームス・スキナー訳)「TQ―心の安らぎを発見する時間管理の探究」、キングベアー出版(1999)

この中から、価値観の明確化が時間管理のベースであるとする生産性のピラミッドの考え方を取り入れている。

その上で、2つ目のポイントとして、プロジェクトのビジュアル化こそがプロジェクトマネジメントの成功要因だとしている。

これらの考え方に併せて3つ目のポイントは、マインドマップ使って思考の幅を広げることを提案している。

PMBOKのような分析的、体系的なプロジェクトマネジメントが必要な分野もあるが、多くのビジネスプロジェクトでは、多少、重い感じがある。そのようなプロジェクトに対するプロジェクトマネジメント手法として注目に値する方法である。

プロジェクトのビジュアル化こそがではこの方法をセミナーとして提供しているが、その前に、この本を読んでみて、自分の仕事に使えるかどうかの評価をしてみてはどうかと思う。ただし、実際に使おうとすると、ツールも含めて本だけでは不十分だと思われるので、セミナーを受けるべきだろう。

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IT業界のすべてが分かる

4774129801_01__sclzzzzzzz_v45641975 克元 亮 (編集) 「IT業界がわかる」、技術評論社(2006)

お奨め度お奨め度:★★★1/2

ITエンジニアのためのIT業界ガイドブック。一冊、読めば、IT業界がどのような業界で、エンジニアとしてIT業界に入るとどのような仕事をすることになり、そのためにはどんなスキルが必要が必要で、それによりどのようなキャリアが開けるかが分かる構成になっている。

また、後半はプロジェクトマネジメント、ビジネストレンド、セキュリティ問題、法令などについても触れられており、お買い得感がある本。IT業界への就職を目指す人にお奨めした一冊である。

IT業界というキーワードでまとめているが、いくつかの視点が入っているので、細かく言えば、章によってお奨めしたい人が違う。2章や4章、8章はIT系企業の新入社員にぜひ、読んでもらいたい。6章、7章は、提案を担当する営業マンが読むと役に立つ内容だ。

全般的に、一般のビジネスマンがIT業界の企業と付き合うときに読んでおくと役立つだろう。これに最も適した本かもしれない。

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