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2006年11月

2006年11月29日 (水)

リアリティのある目標を立てる

453403637x_09__aa240_sclzzzzzzz__1 野口靖夫「リーダーのための目標の立て方・達成のしかた」、日本実業出版社(2003)

お奨め度:★★★★

目標。。といった本は、MOBの普及以来山ほどある。

その中で、何気なく、本屋で手にとってびっくりした一冊。

日本で一部上場企業の8割がMOBを導入しているという割には、その具体的な成果を語る人事担当者は少ない。どうもいろいろ話を聞いてみると、問題の本質は、目標設定の仕方にあるのではないかと思う。

確かに、BSCしかり、戦略目標から個人の目標へまで落とし込んでいくと、自動的に目標が設定されるように考えてしまう。テーマという意味では確かにそうだと思う。

しかし、目標設定のもう一つの問題は、その先にある。つまり、目標として達成するための方法を見据えた上で、目標設定ができるかどうかだ。目標管理の本では、目標の設定方法については書いていても、その実行方法については、目標の難易度を考えろで終わっている。その中でも例えばこの本などは、学ぶところが多いとても良い本だ。

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金津健治「すぐ使える・すぐできる目標設定法」、日本経団連出版(2005)

目標を立てるということは、その瞬間に達成のための計画を作るということである。にもかかわらず、その意識が希薄であり、それゆえに、設定した目標が達成できないケースが多かった。ところが、人事評価の中での位置づけが定着してきて、今度は、達成することに意識が移った。それは、残念ながら計画を作ってきちんと目標をクリアするということではなく、組織目標の末節のテーマで「実施できる目標を探す」という方向に向いてしまった。

いずれにしても、成果がでる目標の設定ができていない。

この問題を解消するには、各人が目標の達成スキルをきちんと身に付けていく必要がある。その本格的なものはプロジェクトマネジメントであるが、そこまではという向きには、この本をお奨めする。

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2006年11月27日 (月)

条件設定でやる気を調整する

489451243201_1 石田淳「続ける」技術」、フォレスト出版(2006)

お奨め度:★★★1/2

IS行動マネジメントの石田淳さんの新しい本。続けるということだけの焦点をあて、行動科学の視点からいろいろなアドバイスを与えている。

この本に書かれている行動科学を続けるというのに結びつけるロジックは

 条件設定により続ける → 自信がつく → 継続への動機付け → 自発的な行動

というものである。この中で、この本は、どのような条件設定をすれば、行動が生まれるかを詳しく、また、易しく解説してくれている。その意味で、実践的な一冊である。

ただし、このような行動科学のアプローチが万人に通用するものではないということも同時に感じた。以前このブログで、「やる気の自己調整」について書かれた金井先生の本を紹介したが、この中で、やる気の源泉を「緊張系」、「希望系」、「持論系」の3つに分けている。行動科学を用いるやる気の自己調整というのは、いくら条件設定が上手でも、本質的には「緊張系」に限定されるので、その意味で合わない人は多いのではないかと思う(僕もそうです)。

ただ、条件設定をとして希望系の条件設定で行動できる人もいるようにも思うので、この辺りが今後の課題ということになるのだろう。

それから、石田さんはおそらくそうなのだろうが、この方法自体を自分のものにできれば、これは金井先生のいうところの「持論系」になる。そういう道もあるだろう。

石田さんの本の記事:リーダーのためのとっておきの一冊

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2006年11月24日 (金)

創造的模倣

4479791817_01__aa240_sclzzzzzzz_v3471058 三田紀房「個性を捨てろ!型にはまれ! 」、大和書房(2006)

お奨め度:★★★★

ご存知、偏差値30台の高校生が現役で東大合格を目指す異色コミック「ドラゴン桜」の三田紀房氏の啓蒙書。三田紀房氏は、ドラゴン桜以外にも、ボクシングの世界チャンピオンがビジネス界でのチャンピオンを目指4063289095_09__aa240_sclzzzzzzz_4091846629_01__aa204_sclzzzzzzz_す「マネーの拳」というコミックスも書いている。

著者によると、コミックスではなく、もっと直接的に言いたいので本にしたとのこと。

ドラゴン桜にもマネーの拳にも共通する違和感がある。それは、「型」に対するこだわりと、組み合わせに対するこだわりだ。

世の中には成功するための型があり、成功するためには型にはまる必要があることを徹底的に主張している。これは著者の独自の主張というよりは、むしろ、多くの成功本で言われていることだ。

そして、より大きな成功をするには、その組み合わせが重要であるという2点。ここは、著者のオリジナリティだと思う。

誰もできないことをやるのは快感である。しかし、誰もできないことをやるよりは、成功していることがやっていることを「確実」にやるほうが難しい。競争するというのは結局そういうことであり、型にはまれという話は競争を恐れるな、同じ土俵で競争して勝てという王道を主張しているようにも思える。

もう、10年以上前になるが、この話を実証するような本が出版されている。

4641067813_09__aa240_sclzzzzzzz_ スティーヴン・P. シュナース(恩蔵直人、嶋村和恵、坂野友昭訳)「創造的模倣戦略―先発ブランドを超えた後発者たち」、有斐閣(1996)

お奨め度:★★★★1/2

この本は、後発企業が先発企業を逆転している例を集め、その要因を分析し、それらの要因を持つ戦略を創造的模倣戦略と呼んでいる。

・35ミリカメラ:キャノン:ニコン

・ボールペン:パーカー、ビック

・クレジットカード:VISA

・MRI:ジョンソン&ジョンソン、GE

・パソコンOS:マイクロソフト

・表計算ソフト:ロータス(さらに後発でマイクロソフト)

・ビデオ:JVC

・ビデオゲーム:任天堂

などの企業の事例を上げている。おそらく、二番手企業というイメージの企業はないだろう。むしろ、創造性の高いというイメージを持つ企業が多い。

イノベーションが注目されているが、イノベーションの議論というのは注意する必要がある。イノベータと呼ばれるのは主に、ドミナントデザインができた後で出てきた企業である。上の例を見てもそれは良く分かるだろう。

三田紀房の言い方を借りると、ドミナントデザインができた後で競争することが、成功の型にはまるということだろう。

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2006年11月22日 (水)

今日から役立つ会議TIPS集

4756910394_01__aa240_sclzzzzzzz_v3649441 宇都出雅巳「あたりまえだけどなかなかできない会議のルール」、明日香出版社(2006)

お奨め度:★★★1/2

「あたりまえだけどなかなかできない」シリーズの会議編。会議活性化のノウハウを書いた類書は多いが、この本はシリーズの特徴をとてもうまく使っている。一冊、手元においておきたいTIPS本。

さすがに、会議中にこれを見ながらというわけにはいかないと思うが、101のルールをリスト化しておき、リマインドしながら会議を進めていくとよいだろう。役に立ちそう。

また、内容も半分くらいはどこにでも書いてあるが、半分くらいは、非常に特徴があり、なるほどと思えるものが多い。例えば

場の空気を口に出して表現してみよう

というルールがある。たとえば、「何かあせっているような感じがする」といったことだ。

これは経験上、大変、有効であるが、あまり会議本には書いていない。このようなTIPSが多いのも好感が持てる。

読んでおいて損のない一冊だ。

2006年11月21日 (火)

日本で一番売れているマイクロソフトプロジェクトの本

4756146252_01__aa240_sclzzzzzzz__1 岡野智加「Microsoft Projectでマスターするプロジェクトマネジメント 実践の極意」、アスキー(2005)

お奨め度:★★★★

日本で一番売れているマイクロソフトプロジェクトの本。著者は、日本のプロジェクトマネジメント普及活動の草分けの1人、岡野智加さん。

MSプロジェクトの本というと、どうも、パワーポイント本とか、エクセル本とかのイメージがついて回るが、この認識は間違い。エクセルに例えれば、エクセルを使って、会計をどのようにやっていくかということを説明した本だと思ってよい。

まず、PMBOKをベースにしたプロジェクトマネジメントの方法があって、それを如何にMSプロジェクトを使って実行していくか。つまり、計画をどのように作るのか、進捗管理をどのようにするのかといったことを説明している本だ。

この本には2つの使い方があると思われる。

まず、一つはPMBOKプロジェクトマネジメントの導入をしている組織、あるいは、導入の計画を持っている組織が、PMISとしてMSプロジェクトを導入した場合にMSプロジェクトのトレーニングをするときのテキスト。

MSプロジェクトはシステム自体の操作が相当複雑であるので、このような形で学ぶのがもっともよいと思う。

もうひとつは、プロジェクトマネジメントの導入の際にMSプロジェクトを前提として行う場合に、プロジェクトマネジメントの枠組みそのものをトレーニングするときのテキスト。

いわゆるPM本は、読んでいるとふんふんとうなづきながら読むが、読んだことはあまり実践に結びつかない。その点、この本を使ってプロジェクトマネジメントのトレーニングをすると、実践に直結するのではないかと期待できる。

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2006年11月20日 (月)

人間と組織をどのように理解するか

4393641213_09__aa240_sclzzzzzzz_ ジョージ・ボーク、デヴィッド・トンプソン(斎藤彰悟、池田絵実)「リーダーのためのメンタルモデル活用術―人間と組織を理解する70のモデル」、春秋社(2000)

お奨め度:★★★★1/2

古い本だが読んでみてびっくりした。こんな本があったのかと、、、

何がすごいかというと、マネジメントやリードで使う手法に対して、メンタルモデルという考え方を使って手法の使い方を説明している。このような本をしっかりと参考にしながら、手法スキルの習得をしていけば、少なくとも振り回されることはないだろう。

扱われている手法は

・自己マネジメントのモデル
・リードとマネジメントのモデル
・変革のモデル
・戦略と組織構造のモデル
・目標達成のモデル
・プロジェクト、経営基準とモデル

の6つのジャンルで、70にある。かつ、そのメンタルモデルは、状況を理解し、マネジメントする上でもっとも効果的であったという著者たちの経験を踏まえたものである。

例えば、リードとマネジメントのモデルであれば次の17である

・リーダーとマネジャー

・行動重視のリーダーシップ

・リーダーシップ・スタイル

・マネジメントの機能

・動機づけのプロセス

・人々を動機づけるものは何か

・X理論とY理論

・チームワーク

・チームの役割

・柔軟性を持った自主管理チーム

・チームブリーフィング

・個人別能力開発シート

・個人と能力のマトリクス

・トレーニングの三角形

・コーチング

・行動の修正

コンピテンシーの中で、パフォーマンスコンピテンシーを高めるために非常に効果のある一冊である。

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2006年11月17日 (金)

情けは人のためならず

4901234951_01__aa240_sclzzzzzzz_v3752032 グレン・アーバン(スカイライトコンサルティング監修、山岡隆志訳)「アドボカシー・マーケティング 顧客主導の時代に信頼される企業」、英治出版(2006)

お奨め度:★★★★

アドボカシーというのは聞き慣れない言葉だが、辞書を引いてみるとadovocate=支持する、提唱するといった意味らしい。

要するに、むやみやたらと自社の商品を押し付けないで、顧客の立場に立ち、本当に顧客に役立つ商品を、それが仮に競合他社の商品であっても薦めていく。その中で信頼関係を構築し、長期的なスパンで収益を上げていこうという考え方のマーケティングのことである。

この本では、アドボカシーをプル・プッシュ、リレーションシップ第3のマーケティング戦略と位置づけ、企業は顧客や見込み客に対してあらゆる情報を包み隠さず提供し、顧客が最高の製品を見つけられるようにアドバイスをする関係を想定している。

このような背景にはインターネットの普及により「隠したところで顧客はいずれすべてを知り尽くす」という現実があると想定しているのだ。

ただし、このプロセスは、企業が一方的に顧客にアドバイスを与えるプロセスではなく、顧客との対話により顧客を支援していくプロセスであるとしている。言い換えると、顧客は自社の製品を買わないまでも、自社の製品を知り尽くす。そして、その情報を顧客が別の顧客に推薦してくれるという関係を構築しようという考え方である。

この本を読んでなるほどと思った。僕の会社は小さいのでこの手のことがよくあるのだ。つまり、お客様から相談を受けたときに、自社では最適解が提供できないというときには、競合でもいいので、最適解を提供できそうな企業を紹介をする。場合によっては本当に紹介の労をとることもある。そんなお客様に、弊社に適したお客様を紹介してもらうことが結構ある。

ロジックが分かっていることと、実行できることは別だというマーケティング手法の典型かもしれないが、だからこそ、実行できるところは強くなれるかもしれない。

2006年11月16日 (木)

トヨタ方式の真髄を知る一冊

4492555722_01__aa240_sclzzzzzzz_v3602165_1 若松 義人「トヨタ式ならこう解決する!―思考から仕事を変えるケースブック」、東洋経済新報社(2006)

お奨め度:★★★★

トヨタ方式を40ケース以上の他社の問題解決に適用した事例を、コンパクトにまとめた一冊である。

僕は若松さんの著作は好きなので、だいたい読んでいる。このブログでも何冊か紹介している。

言い方は悪いが、若松氏の著作を読んでいても、トヨタだからという思いが拭い去れない部分があった(エピソード的に他社適用の話が入っている本も少なくないが、、)。実際のところ、これはトヨタだからできるというのは少なくないと思っていた。

しかし、この一冊を読んで、むしろ、他社事例により、トヨタ方式の本質が分かったような気がした。特に、書き方が、自社に適用してみて、なぜトヨタ方式がよいかを分析するといった書き方になっているので、腑に落ちる。

同じ感触を持った本にトヨタウエイがあるが、トヨタウエイよりはこの本の方が腑に落ちる。その意味で貴重な本である。

【このブログで紹介している若松氏の他の本】

若松義人「最強トヨタの7つの習慣―なぜ「すごい工夫」が「普通」にできるのか

【トヨタウエイ】

ジェフリー・K・ライカー(稲垣公夫訳)「ザ・トヨタウェイ 実践編

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2006年11月15日 (水)

人材育成担当の必読本

4478440557_01__aa240_sclzzzzzzz_v3856815 中原淳 (編集)、荒木淳子、北村士朗、長岡健、橋本諭「企業内人材育成入門」、ダイヤモンド社(2006)

お奨め度:★★★★1/2

企業内人材育成に際して必要な心理、教育理論を体系化した本。理論だから実践的ではないということではない。

人材育成については、おそらく、担当者はそれなりの持論を持っている。しかし、人材育成は非常に多面的な仕事であるので、その持論ですべてがうまく行くことが珍しい。うまく行かないときに、別の視点からやり方を見直してみることが大切である。

そのような目的で現場の実践家が使える本だと考えてよい。目次を見て戴くと良く分かるが、学習メカニズム、動機付け、インストラクションデザイン、学習環境デザイン、キャリア開発、と内容は心理学、教育学にわたっており、非常に幅広い。それぞれについて、執筆者が簡潔にまとめていて、読みやすい。

また、この種の編著にありがちな、得意分野を並べているといった風の本ではなく、関連性も比較的明確で、バランスが取れているように思う。その意味でも、企業の人材育成者に一度は読んでほしい一冊である。

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2006年11月14日 (火)

あなたが打ちやすいボールを送りたい

4761263482_01__bo2204203200_pisitbdp500a 三屋裕子「あなたが打ちやすいボールを送りたい―思いやりの心がビジネスを育てる」、かんき出版(2006)

お奨め度:★★★1/2

ご存知の方も多いと思うが、本書の三屋裕子さんは、バレーボールの名選手で、現役時代には全日本の中心選手としてオリンピックで銅メダルをとったチームの主力だった。引退後は教員として活動する一方で、大学院でスポーツ科学の研究をしていたが、2年ほど前に突然、シャルレの社長になり話題になった。

この本は、パレーボールでの経験をシャルレでの社長業でどのように応用したかをまとめた一冊。

スポーツの経験をマネジメントに活かすというのは珍しくはないアプローチであるが、ほとんどのケースはチームマネジメントなどのオペレーションマネジメントに適用している。三屋さんのようにトップマネジメントに活かした例というのは珍しいと思う。

内容は非常に新鮮である。既存の考え方にとらわれず、バレーボールでの経験から、ものごとの本質を捉え、問題を解決するというアプローチを徹底している。同じだけの経験をしている人はいても、経営の現場で三屋さんのようにものごとの本質を捉えることができるものではないだろう。そこにポイントがあるように思う。

三屋流を一言でいえば、タイトルにあるとおり、ホスピタリティである。「後工程をお客様だと思え」というのはトヨタ流を代表する言葉の一つだが、本質的には戦略の実行者になる社員に対して、如何に力を発揮できる課題を与えるか、そして、環境を与えるかに特徴がある。

そのような考え方に共感できる人は、ぜひ、読んでみてほしい。

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